■G街、青春編・1■

私が初めてG街を訪れたのは『さるがっそう』(今のルマタン)という店。
“エイズ基金チャリティイイベント”と称して、色物女優を集めてひと騒ぎの宣材撮りの為である。

愛染恭子とジャネットジャクソンをたして2で割ったような美人ママ。壁にキャンドル点るケーキを目の前に微笑む男性客の写真。

「お誕生日ですかあ?」「ああ、それ離婚のお祝い」私は衝撃を受けた。
……大人の世界って深い……

歩いて1分のところに住んでいた私は、パジャマ姿で深夜ちょこちょこ行くようになる。しかし、この頃の私は、まだキ×チガイ酒ではなかった。

ある日帰りがけ、役者の速見健児クンに遭遇し、連れていってもらったのが、その名も『ビッチ』という店。私はここで、大酔っ払いの洗礼を受けることになる。

ここのマスターは、かなり奇妙な生き物だった。早い時間は暇でひとりで暗くトランプ占いなぞするのだが、深夜となれば、いきなりお客の服の中をすり抜けたり(状況を想像できないとは思いますが、なんせ舞踏家なもんで)ラーメン屋に匍匐前進で、スリスリ入って来て、人の食べ残したラーメンをズルズルと啜り、「同じものください」と注文する。そして、食ったものを反芻する(なんせ舞踏家ですから?)

みんなで歩いていると、いきなりダッと走り出しマンモス交番に駆け込み、「助けてください。悪い人達に追われているんです。」とこちらを指さしたりと、まあ、理解不可能な生き物だった。

そこに集う人達も、みんな一筋縄ではいかない奴等。みんなかなりの酔っ払いなので、常連といえども、お互い顔なんか覚えない。

ドリアン助川くんとかは、会う度に「はじめまして」とごあいさつ。ライターのとよちゃんとは、何度も泣きながら肩を抱き合い語りあったのだが、酔いが覚めると、その内容は、ふたりとも、モチ、覚えていない。

しかし、再び酔っ払ってくると、その“続き”を話せるのだから不思議なものだ。(しかし、その頃から、棋士日浦くんは変わってないあ)「ヨーコは、本物の酔っ払いだから、えらい。意味ナシだもの。」と誉めてくれた(?)人は、後にも先にもここのマスターだけである。

普通、G街は、何件かハシゴする人が多いのだが、『ビッチ』の客は、『ビッチ』だけという人が多かった。行っても、『ぼだい樹』(シネストークの前身)くらいだった。

なので、マスターが突然「ム〜フフ〜私、田舎に帰って、実家の農家つぎます。では、みなさん、さようなら。」と店を閉めた後は、まるで『ビッチ』という店は“存在しなかった”というように消えた。

お別れパーティーの酔狂をビデオに収めた奴がいたのだが、無論、そのビデオは封印された……。

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